
「昔はお盆になると、親が盆下駄(ぼんげた)買ってくれたんだよ」
お盆の日、朝ごはんの時におばあちゃんが言いました。
「わたしは盆下駄、隣のばあちゃんからもらってたな」
と、おばちゃん。
「どうして隣のおばあちゃんからもらってたの?」
とわたし。
「それはね、捨て子だったからだよ」
「ええっ!おばちゃん、捨て子だったの!」
それにはこんなわけがありました。
33歳の時に生まれた女の子は捨て子にする
昭和の初めごろのこと
このあたりには、お母さんが33歳の時に生まれた女の子は捨て子にする、という風習がありました。
と、言っても本当に捨ててしまうわけではありません。
捨てた、ということにして、知り合いに親がわりになってもらうのです。
別にその家にもらわれていくわけではなく、当たり前に本当の両親のもとで育つのですが、
お盆や正月には必ずその拾ってくれた家にあいさつに行きます。
また、その家でもお祝いがあったり法事があったりすると、その子供の席をちゃんと用意して待っています。
その子が学校を卒業するころまで、そうやって親になってくれた家とのお付き合いが続いたそうです。
どうしてそういう風習が始まったのかは分かりませんが、昔は子供が病気で亡くなることも多かったので、そうやって気づかってくれる人を増やすことで無事な成長を願ったのかもしれませんね。
話してくれた人 渡辺典子さん・白石千江子さん(丹伊田) 令和2年8月
