昔、ある家の息子が胸の病にかかった。
「息子の病が治りますように」
母親は山王様(さんのうさま)に21日の間願(がん)をかけてお参りをした。
満願(まんがん)になった日、母親が息子の看病をしながら、つい居眠りしていると、
―山王様のうしろに牛が寝ており、その牛が起きあがると、
「お前はよく参詣している。今度、山王様へいったら、米がお供えしてあるから、それを息子に食べさせるように」
といった―
母親が山王様へ行ってみると、夢のお告げの通り、お米がお供えしてあった。
さっそく食べさせてみたところ、息子の病気はうそのように良くなったという。
この神様は、医者の道を開いた神様であるという。
また、子どもが病弱で育ちが悪いときはこの神様にあずけ、神様の子どもとすることで無事に成長することを願う、取子(とりご)の風習があったという。
【ことば】
山王様(さんのうさま)…日枝神社のこと
満願…日数を決めて神様に願い事をした、その最後の日
〇再話 渡辺雅子
引用「郡山市史 民俗資料カード」 日枝神社(三町目)