昔々、逢隈村(おうくまむら)鬼生田という所があって、道路から車も通らない細い路を奥へ奥へと行くと、竹ざさや大きな松林があった。
林の中ではカッコウ鳥や狐が鳴いていた。
そこに重ね池という大きな池が二つ並んであった。

 ところがこの池は雨が降るたびに土手が崩れ、村の人たちが直しても直しても崩れてしまうので大変困っていた。

そんなある日、人の杭をさせば崩れないという話を聞き、ボテフリ(てんびん棒の前後のカゴに品物を入れて売り歩く人)をつかまえ、酒や魚でもてなし、そのまま埋めてしまった。

 それから土手はいちども崩れることなく、今ではこの池もきれいになり、休みの日には子どもたちが大勢集まり、魚釣りなどをして遊ぶようになった。

(西田町 渡辺イノ)

参考文献『郡山の伝説』
昭和61年3月10日発行
監修 東洋大学教授・文学博士 大島建彦
発行 郡山市教育委員会
編集 郡山市教育委員会社会教育課

I ❤ NISHITA―豆知識―

★逢隈村(おうくまむら)

鬼生田は、昭和30年に高野村と逢隈村(おうくまむら)が合併して西田町になる前は、逢隈村鬼生田でした。

★ぼてふり(棒手振り)

江戸時代に盛んだった商売のやり方で、棒の両端におけやかごをぶら下げて魚や野菜などの商品を入れ、真ん中を担いで売り歩いたそうです。